そこから自由に抜け出せる軽やかさを得るためには、コミュニティの外側に、自分が本来立つべき位置っていうのを自分で確保しなきゃいけない。それは多分、外側と言いながらも自分の内側にある、秘密の小部屋なんだと思うんです。
僕がウェブマガジンというものを見るきっかけになったのは、遅いインターネットだった。
なにが切っ掛けか分からなかったが、数年ぶりにサイト名を目にして「懐かしいな」と見返していた時に見つけたのがこの記事。自分の内側にある、秘密の小部屋という表現がずっと胸にいた。
秘密の小部屋を今の僕は持っていない。自宅には自室はなくて、家人が居なければ秘密の空間と言えなくもないが、どことなく、プライバシーでありながらも開かれているような気がする。恐らく家人という他者と住んでいるから感じているんだと思う。
今まで僕は持っていなかったんだろうかと考えた時、一番最初に浮かんだのが昔家にあったドレッサーだった。
大きな鏡、鏡と机とつながる部分にハガキ大ぐらいの引き出しが二つついていて、確かテーブルにもふたつ引き出しがついていた。
母が化粧をするために使っていたけれど、そこでお人形遊びをするのが好きだった。
当時持っていたのはリカちゃん人形のような甘めの顔をした女の子の人形、あとバービーではない外国人風の顔をしたブロンドヘアの人形、あとはポケモンのゴム人形や、ガチャガチャで手にしたようなおもちゃなど種類は多彩だった。
ただ遊びのテーマは常にロマンスで、泥沼の恋愛劇(ドール人形は女の子2人だけだった気がするので、誰が相手役なのかはわからない)や、女の子同士のえっちの物まねや、ドールが凌辱されるのを助けに来るおもちゃたちみたいな、そういうしょうもないものだった気がする。
あの鏡台の上で日々遊んで、好きなように考え閃いていた感覚が思い起こされた。
決して秘密基地でなかったけど、家人のいない部屋で一人人形で遊ぶ時間は、誰よりも自分との対話ができていた気がする。
秘密の小部屋の話を見る前に、いつの間にか心の中で誰かと話すことがなくなったなとも思った。
外を見る度についてきた忍者や、妖精の姿を見なくなったし、人差し指を中指で模した足で街を歩かなくなった。
どちらも自分の中から出てきたものだったのに、いつの間に見えなく・見なくなってしまったんだろう。
成長して何かを失ったような気がする。だけど失ったようなものを取り戻すために、秘密の小部屋を見つける方法が良くわからない。